売価主義で行きたいものであります。
いぬやしきというマンガは1冊(1巻)の損益分岐点が19万部というトンデモをない作り方なのだそうです。
本人?のツイートによる情報なのでウソでは無いと思います。
いぬやしき、凄いコストをかけて作ってるので、採算分岐点が一冊19万部という とんでもない作り方なんですが、今のところ 続けて行けそうです!
どこのメディアの後押しもなく ここまで来れたのは、本当に読者の皆さんの口コミのおかげです!最後の10巻までよろしくお願いします!
— 奥 浩哉 (@hiroya_oku) 2015, 2月 19
まず、興味を持ったのが(お金大好きtony togoですから)一体幾らの原価を掛けているのだろうか?ということです。
漫画家本人の言う「原価」ですので、原稿制作費用=印税収入という設定で推測してみましょう。
コミックスの価格は、紙が637円、電子版(Kindle)が540円。それぞれ印税率を10%、35%とします。販売比率は8:2で計算しました。
19万部売れた時の印税を計算してみると「1千686万円」。
スゴイ金額ですが、これが原価(1冊当たりの原稿制作費)ということは、アシスタント代やら取材費やら資料や機材費とかがものすごいってことですね。
1話当りの原価も弾いてみると・・・、
コミックス2巻で17話ありますから、1冊8.5話、そうすると1話当り平均「198万円」掛かっている計算になります。連載誌のイブニングは2週に1回発行ですから、ざっくりひと月400万のコストです。
※1話当たりの金額計算が間違ってたので修正しました。
これだけの原価を突っ込んで勝負している漫画家という職業はマジでスゴイですな。
売価は事実上固定のコミックスという市場でここまでの覚悟、1,2巻に続き、3巻も間もなく発売になりますので当然応援させて頂きますよ。
さて、ここで私tony togoが属する所謂広告業界に目を移してみましょう。
得意先の予算に合わせて仕事をする場合は、漫画家さんと似たような条件であると考えられます。
マンガと違って大抵オーダーメイドで1回切りですので原価割れは避けたいのですが、求められるのは「どこまで原価を突っ込むか?」という覚悟です。
新規参入の制作プロダクションは、原価ギリギリか人件費で足が出る程度まで作りこんでくるか、デジタル化の恩恵で機材や人件費が軽いかどちらかで攻めて参ります。
得意先とどっぷりやってきた制作プロダクションは、そういう会社に足を掬われて潰れるのです。
元電通の師匠は、こんなことを言っています。
原価主義か、売価主義か?
会計用語とは全く違う使い方なのですが、原価主義ってのは「原価に利益を上乗せした見積り」、売価主義ってのは「仕事の価値を見定めて売価から設計した見積り」って意味で教わりました。
原価主義は、どこまでも想定内の仕事しか残らない。
一方、売価主義は自分たちの提供する価値を堂々と主張していける仕事のやり方であると。そう教わりました。
B2Bの場合は、売価主義でやるべきだと、今でもそう思っております。
しかし、大体の場合、コミックスのように市場原理でこの程度の仕事はこの金額、という予算感に縛られるのです。バブル崩壊以来その傾向は強まる一方です。
しかし、ここらでガツーンと強気の見積りを出せるような圧倒的な力量の違いを見せつけたいものですな。景気のためにも。